2019年2月、競泳女子のエース・池江璃花子選手が白血病であることを公表し、世間では大きくその病気の存在が認知されるようになりました。
血液のがんである白血病は若い世代の発症が多く、かつては死に至る病として恐れられていました。
しかし、池江璃花子選手は、2019年12月の退院から1年半も経たない2021年4月には、東京五輪代表選手に内定するほどの回復を見せました。
医療の進歩はもちろん、池江璃花子選手ご本人の競泳に対する強い意志が感じて取れますね。
池江璃花子選手が患ったとされる白血病の種類から治療法、経過まで、詳しく解説します。
※この記事は医療従事者の監修の元執筆しています。
池江瑠璃子の白血病の種類は?
池江璃花子選手の患った白血病という病気には、いくつか種類があるそうです。
池江璃花子は「急性リンパ性白血病」だった!
白血病は血液のがんであり、その進行具合や異常が起こる部位によって、大きく4つの種類に分類することができます。
- 急性骨髄性白血病
- 慢性骨髄性白血病
- 急性リンパ性白血病
- 慢性リンパ性白血病
発症すると急速に症状が現れ、素早く進行するのが急性、年体位でゆっくりとがん細胞が増殖するのが慢性と区別されます。
ここから更に、赤血球、血小板、白血球(リンパ球以外の種類)に異常が生じるのが骨髄性となります。
そして、白血球の種類の内、免疫に強く関わるリンパ球に異常が生じるのがリンパ性(下図のオレンジ部分)になります。
2018年に公表された国立がん研究センターの調査報告では、15~19歳のがんの4分の1は「白血病」と報告されています。
そのうち最も多い急性骨髄性白血病は10万人に2~3人です。
一方、急性リンパ性白血病は小児や15~39歳の世代に多く、小児急性白血病の8割、成人では白血病の2割がこれに当てはまります。
池江璃花子選手もこの急性リンパ性白血病の診断でした。
池江璃花子を苦しめた症状は?
白血病になるとどのような症状がでるのでしょうか。
血液中の細胞たちは体中のあちこちで重要な役割を担っています。
これらが不足すると、次のような症状が主に出てきます。
- 動悸
- 息切れ
- 倦怠感
- 疲労感
- 抵抗力の低下
- 感染しやすい状態となる(易感染)
- 発熱
- 出血
池江璃花子選手は、2019年のオーストラリア合宿中に、体のだるさなどの体調不良を理由に緊急帰国しましたが、振り返ればそれ以前から体調の異変を感じていたようです。
2019年1月に都内で行われた三菱養和スプリントでのレースでは、得意の100メートルバタフライで自己ベストとかなり差があるタイムを記録しました。
出場を予定していた200メートル自由形は体調面を考慮して棄権。
レース後は「自分でもビックリするくらいタイムが遅かった」と話していました。
さらに「体のだるさを感じることが多くなっている。去年に比べるとだいぶ疲れの抜けが遅くなっている感じはしている」とも明かしていましたね。
池江璃花子選手に表れていたこの症状こそ、白血病の症状だったのかもしれません。
酸素はエネルギーを作る時に必須です。酸素を運んでくれる赤血球が少なくなっていたのですから、相当身体は悲鳴をあげていたに違いありません。相当苦しかったでしょうね…。
池江瑠璃子の白血病の回復までの治療法は?
白血病の基本的な治療法は化学療法で、がん細胞を抗がん剤で攻撃することで増殖を抑えます。
しかし、抗がん剤治療では正常な細胞も攻撃されてしまうため、身体を守る役割はさらに弱くなってしまいます。そのため、投与する量やタイミングはその都度調整される必要があるそうです。
池江璃花子選手もこの化学療法を試みましたが、合併症を引き起こし、継続が困難とのことで、最終的には造血幹細胞移植をされました。
この造血幹細胞移植では、骨髄の中にある赤血球、白血球、血小板を作り出すもとになっている造血幹細胞を患者に移植します。
移植された正常な細胞が、がん細胞を破壊してくれたり、血液を造る機能を正常に回復させることによって、病気の治療を行っていくんですね。
ちなみに、骨髄幹細胞ってどこに存在すると思いますか?
造血幹細胞は基本的には身体に流れている血液の中には存在していないんです。実は、骨の中で作られているんです!
造血幹細胞はドナー(造血幹細胞提供者)から造血幹細胞をもらう場合が多いように感じますが、骨の中にある細胞を取り出すのですから、簡単に取り出せるものではありません。
必ず苦痛が伴います。
ドナーになるのも楽ではないんです。
しかし、池江璃花子選手を救いたいという想いが奇跡と苦痛を乗り越える力に変わっていたことでしょう!
ちなみに、池江璃花子さんは、ドナー情報は一切公表していませんでした。
ドナーは誰でもなれるのか…というと、そうでもないことがわかりました。
一番の難関は、ドナーと池江璃花子選手の血液中のHLA型が一致する確率にありました。
私たちにはA.B.O.ABの血液型があります。これは、主に赤血球の分類なんですよね。
同じように、白血球をはじめとする全身の細胞にはHLA(ヒト白血球抗原)という型があり、これが移植の際に重要になります。
HLA型は両親から遺伝的に半分ずつ受け継ぎます。
そのため兄弟姉妹から4分の1の確率で、完全にHLA型が合致したドナーが見つかるそうですが、少子化の現代では難しくなっているようです。
では、他の人から…と考えた時の一致確率は、数百~数万分の一の確率となっているのですから、一筋縄では行かないことがわかります。
しかし、ご兄弟がいらっしゃることや、非血縁者との一致確率、化学療法の中断から造血幹細胞移植を行うまでの経緯がスムーズだったことなどから、ご兄弟がドナーとなった可能性が高く考えられます。
池江瑠璃子の現状や再発の可能性
昔は死に至る病と恐れられた白血病ですが、現代では医学の進歩により、白血病も完治することができるようになりました。
「治癒」とは異なりますが、治療がうまくいき、通常の検査でがん細胞がほとんど検出されなくなることを「寛解」といいます。
九州大学の赤司浩一教授は朝日新聞において、白血病の治療では、この「寛解」の状態を5年間維持すると完全寛解(完治に近い)となると発言されています。
となると、池江璃花子選手の場合、現在は完全寛解、つまり完治に近い状態ということになります。
また、再発は通常5年以内に起こるため、この期間を絶えることができれば、再発のリスクはかなり下がると考えられますね。
池江璃花子選手には、このまま再発せずに、水泳競技を思いっきり楽しみ続けていただき、素敵な笑顔を見続けられたら嬉しいですね!
まとめ
池江璃花子選手は急性リンパ性白血病になり、化学療法や造血幹細胞移植を行って現在は完全寛解状態にあることがわかりました。
造血幹細胞移植のドナーは公表されていませんが、HLA型の一致確率や化学療法から移植までの期間を考えると、ご兄弟にドナーになっていただいた可能性が高いことが推測できます。
驚異的なスピードで競技に復帰した裏には、医療はもちろん、池江璃花子選手の並々ならぬ努力があっのでしょうね。
今後も再発せずに完治されることを祈るばかりです。
最後までお読みいただきありがとうございました。